文化財ニュースNo.26
発行 赤穂市教育委員会
編集 生涯学習課文化財係(赤穂市加里屋81番地 0791-43-6962)
令和元年8月22日
このページでは、平成30年度に赤穂市教育委員会が行った事業を総括しています。
最新ニュースは、トップページからご紹介していますのでご覧ください。
また、これまで記事となった事項は、リンクをつけておりますのでご参照ください。
最新ニュース
■国史跡赤穂城跡に関する活動
- 赤穂城跡整備事業
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赤穂城跡では、平成30年度事業として、二之丸東櫓台、二之丸西中門の発掘調査及び二之丸東部城壁の修理を行いました。
二之丸東櫓台は、明治以後に櫓台背後が土取りされてしまい、崩落している状態にありました。平成25年度より実施している二之丸城壁修理の一環として、この櫓台も修理することになり、その基礎資料獲得を目的とした発掘調査を実施しました。調査では、櫓台復元のための貴重なデータが多く得られました。
あわせて実施したのが、二之丸西中門跡の発掘調査です。西中門は、現在整備中の国名勝、二之丸庭園の西端にあたる門であり、整備の基礎資料獲得を目的として発掘調査を実施しました。
調査では、門の控柱礎石のほか、門につながる土橋などが見つかり、その構造がかなり明らかになりました。
なお、これらの成果報告を行うため現地説明会も開催しました。詳細は現地説明会資料をご覧ください。
平成30年度にはこのほか二之丸東部城壁の修理を行っています。
加里屋川に面したこの城壁は、明治以後に石垣裏側の土が削られたために大きく孕んでおり、天端石については崩れ落ちている状態でした。
今回の修理では、当時の石垣をできる限り残す方針としているなか、上から最大6石程度の石垣修理を実施するとともに、裏側に土塁を復元することで、石垣の劣化を防ぎました。
なお、整備に伴って発掘調査も実施しています。発掘調査では、石垣構築時の技法を示す遺構などが発見されました。 - 赤穂城跡本丸御殿間取りの改修
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赤穂城本丸跡は、平成13年の厩口門修理によって整備が完了し、一般に公開されてきましたが、イベント会場として利用されることが増えるにつれ、地盤面から突出した間取り表示が観覧に支障を生じさせることが指摘されるようになりました。
そこで今回の改修工事によって間取り表示を地面に埋め込むこととしました。今後のイベント開催時はより利用しやすくなりますので、ぜひご活用ください。またそれに合わせ老朽化した縁台や木部の取り換えも実施しております。 - 赤穂城跡本丸土塀の改修
- 本丸門は平成8年度に竣工し、23年が経過しました。そのため周辺の土塀が劣化し、一部に崩落が認められましたのでその修理を実施しました。しかしながらすべてが完了しておりませんので、令和元年度事業でも修理を実施する予定です。
二之丸東櫓台の調査状況
二之丸に西中門跡の調査状況
二之丸東部城壁の調査状況
本丸御殿縁台
本丸御殿間取り表示
■有年に関する活動
- 有年考古館活動
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赤穂市立有年考古館では、年間を通して様々な特別展・企画展を開催したほか、体験学習を行いました。
特に、特別展「SALT!赤穂の塩とその歴史」では、赤穂が全国的に有名な塩の産地であったことを紹介する展示で、その歴史を探りました。 - 文化財説明板の作製設置
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文化財係では、市内に所在する文化財への来訪者に、より理解を深めてもらうため、説明板を設置しております。
平成30年度は、塩屋荒神社屋台行事の説明板を設置いたしました。
塩屋荒神社屋台行事は、江戸時代からつづく秋の祭礼の一部を構成するもので、市内で最大の屋台行事です。その重要性から平成28年8月31日には赤穂市指定無形民俗文化財に指定されています。
説明板はカラー写真等でその歴史や意義を解説していますので、ぜひご来訪ください。 - 『赤穂市立有年考古館』第6号を刊行
- 赤穂市立有年考古館では、前年度に実施した事業の年報を刊行しており、平成29年度年報として、平成29年度の事業を紹介しております。
展示図録としての機能を持たせており、播磨の陶器に関する特別展等について、写真・図面を多用してわかりやすく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
詳細は、図書紹介ページをご覧ください。
■赤穂市立有年考古館報告書『有年考古』第6号を刊行しました!
- 有年歴史公園の改修工事
- 施設の老朽化に伴い、有年原・田中遺跡公園では周囲の木柵改修工事を、東有年・沖田遺跡公園、有年原・田中遺跡公園では机やベンチの修繕工事を、また有年考古館の外壁修理工事を実施しました。
塩屋荒神社屋台行事説明板
■埋蔵文化財に関する活動
- みかんのへた山古墳の調査
- みかんのへた山古墳は坂越にある古墳で、直径30mの大規模な円墳として昭和50年に県指定史跡に指定されています。
平成24年度に測量を実施した結果、山火事等の影響もあって土砂の流失が疑われました。その後の経過観察も踏まえ、植生の復旧が進まないことから、範囲確認調査を行いました。
調査はまず平成24年度の測量調査で存在が推定された小古墳の範囲確認を行うこととなりました。その結果、埴輪等の遺物は見つからなかったものの仮称2号墳が発見されました。
今回の調査によって、みかんのへた山古墳は古墳群を形成することが明らかとなり、その築造時期を決定するうえでも重要な成果となりました。 - 保存処理
- 発掘調査等で出土した遺物の保存処理事業では、昨年度の赤穂城下町跡発掘調査で見つかった木簡等の木製遺物8点の保存処理を実施しました。
- 西野山3号墳出土遺物レプリカ作製
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西野山3号墳は、上郡町西野山にある前方後方墳です。昭和25年に有年考古館(赤穂市有年楢原)の松岡秀夫館長が調査を実施し、三角縁神獣鏡等の重要な資料が出土した古墳として有名です。
現在この資料は赤穂市立有年考古館に収蔵され、赤穂市指定有形文化財となっています。この貴重な資料について、実際に体感できる展示を充実させるため、レプリカを作成しました。平成30年度は鉄剣を作成しており、現在赤穂市立有年考古館で展示・体験できます。 - 放亀山古墳調査報告書の刊行
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平成29年度に実施した、市内初の前方後円墳、放亀山古墳の調査報告書を刊行いたしました。詳細は、図書紹介ページをご覧ください。
放亀山古墳発掘調査報告書を刊行しました!
■歴史文化基本構想
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赤穂市教育委員会では、市内に所在する歴史文化遺産を、指定、未指定を問わず悉皆調査して整理し、今後のまちづくりに活かすための計画「赤穂市歴史文化基本構想策定事業」を平成29年度に策定し、平成30年度には報告書とガイドブックを刊行いたしました。
またあわせてWebサイト「兵庫県赤穂市の歴史文化」を開設し、インターネット上でも公開しておりますので皆さまご活用ください。 - Webサイト「兵庫県赤穂市の歴史文化」
■その他
- 文化財資料のデジタル化
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赤穂市教育委員会では、これまでに作成したアナログの文化財資料について、デジタル化を行うことで恒久的な保存を図る事業を実施しております。
平成30年度事業としては、東有年・沖田遺跡の発掘調査で作成された図面のトレース等を実施しております。スキャニング図面は、今後の業務の効率化につながります。