文化財ニュースNo.14
発行 赤穂市教育委員会
編集 生涯学習課文化財係(赤穂市加里屋81番地 0791-43-6962)
平成19年4月22日
このページでは、平成18年度に赤穂市教育委員会が行った事業を総括しています。
最新ニュースは、別ページでご紹介していますので、下の見出しをご覧ください。
最新ニュース
- 新指定文化財の紹介
- 誓教寺六道絵
- 坂越盆踊り
- 講演会情報
- 有年考古館による講演会開催
赤穂城整備
- 二之丸北隅櫓台改修
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国史跡赤穂城跡は、その指定理由の一つとして複雑に折れ曲がる石垣が良好に遺存していることが挙げられています。
しかしそのネックとなるのが、二之丸門枡形周辺の石垣です。この周辺は、明治大水害に伴う千種川波堤復興のための石材として利用され、現在あとかたもなく消え去っています。赤穂城跡を訪れる観光客も、ここに二之丸門があったことさえわからないという状況で、赤穂城跡の魅力を完全に知っていただいているとは言いがたいのです。また、現在整備中の二之丸庭園は、石垣によって囲まれた空間に独自の庭園空間を作り出すことが魅力であり、隣接した大石頼母助屋敷跡とともに、二之丸石垣の修理改修は長く望まれてきました。
赤穂市教育委員会では、平成18年度より二之丸北隅櫓台の実測、解体修理に着手し、継続的に石垣を築いていく予定です。最終的には二之丸門枡形付近まで築き、往時の二之丸枡形を取り戻すことができればと考えております。ご期待ください。
- 二之丸庭園屋形船遊覧
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赤穂市教育委員会では、平成18年度のじぎく兵庫国体の協賛事業として、赤穂義士会の寄附により製作された屋形舟「浅野号」による赤穂城二之丸庭園遊覧を行いました。わずか4日間でしたが500名を超える参加を得ることができ、大好評のうちに終わりました。その後、12月14日の赤穂義士祭でも、二之丸庭園の池泉を全周できるように遊覧を実施しました。
また今年の2月には遊覧用屋形舟の2隻目「大石号」が完成し、より多くの皆さまに乗船いただけるようになりました。
今年度も、ゴールデンウィーク(5月3日〜6日予定)など各種イベントにあわせて遊覧を実施する予定ですので、ご期待ください。
指定・100選
- 赤穂城跡公園が「日本の歴史公園100選」に
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すでに2月の速報にて触れましたが、平成18年10月27日、都市公園施行50周年等記念実行委員会により、赤穂城跡公園が「日本の歴史公園100選」に選定されました。
(1)歴史的・文化的資源を適切に保存・再生・活用しながら、公園として一体性のある整備がなされていること、(2)地域の象徴となり、観光振興・地域振興の拠点、郷土愛の醸成など、大きな効果を現に発揮していることを評価されたものです。
兵庫県内では、神戸市の東遊園地、相楽園、再度公園、姫路市の姫路公園、明石市の明石公園が選ばれています。 - 坂越の街並みが「美しい日本の歴史的風土準100選」に
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平成19年2月16日、港町坂越の歴史的街並みが「美しい日本の歴史的風土準100選」に選定されました。これは同実行委員会(事務局:財団法人古都保存財団内)が実施し、応募数全国700件のなかから100選(特別枠)、100選(特別枠除く)、準100選が選定され、坂越の街並みが準100選に選ばれたものです。
100選(特別枠)には世界文化遺産指定地域及び古都保存法の古都指定都市47市町村が選ばれ、100選(特別枠除く)には城下町篠山の街並みなどが選ばれています。近年、坂越の街並みはウォーキングコースとして注目されており、この準100選が人気の追い風となることでしょう。
- 赤穂緞通が兵庫県伝統的工芸品に指定
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平成19年3月30日に、赤穂緞通は兵庫県伝統的工芸品に指定されました。
兵庫県伝統的工芸品とは、平成4年度に創設されたもので、長い歴史と地域の風土に培われ、洗練された工芸品が指定されています。現在は赤穂雲火焼を含む23件の伝統工芸品があり、今回、赤穂緞通などが追加されることとなりました。兵庫県伝統的工芸品として指定を受けるには、県内で製造された工芸品で、
(1)日常生活の用に供されていること。
(2)製造工程の主要部分が手工業的であること。
(3)伝統的な技術技法により製造されていること。
(4)主たる原材料が、伝統的に使用されているものであること
の4点を満たすことが必要とされています。以下に概要を示します。
指定年月日 平成19年3月30日 指定者 兵庫県(県知事:井戸敏三) 工芸品名 赤穂緞通 被指定者 赤穂緞通を伝承する会、赤穂緞通生産者の会 伝統的技術技法 筋摘み、地摘み、仕上げ摘み 伝統的に使用されている原材料 綿糸 製造される地域 赤穂市
指定文化財修理
- 田淵氏庭園石垣
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田淵氏庭園は、御崎地区にある国名勝であり、その価値は全国的に高く評価されています。しかし近年、石垣のはらみが顕著となり、修理が望まれていました。この石垣は茶亭「明遠楼」の裏手にあるもので、この石垣が破損すると茶亭にも影響が及ぶことが予想されていたため、平成17年度には現石垣の測量を実施し、平成18年度には解体修理を実施しました。
また、それにともなって急傾斜地に繁茂していた危険樹木の伐採も行い、庭園の保全が図られました。 - 有年家長屋門の公開、パンフレットの作成
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有年家長屋門は、市内で唯一の庄屋格の長屋門として平成15年に赤穂市指定文化財(建造物)に指定されました。しかし老朽化や台風により著しい被害を被ったため、平成16年度から18年度にかけて一部解体修理工事を実施しました。
平成18年11月12日に行われた「しぶらの里ウォーキング」イベントでは、工事完成後はじめての公開を実施し、それに併せてパンフレットが作成されました。
長屋門は個人の所有物ですが、現在のところ随時公開されておりますので、是非ご見学ください。 - 妙見寺観音堂に消防設備を設置
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妙見寺観音堂は、坂越地区の宝珠山山腹にある古刹であり、赤穂市指定文化財(建造物)に指定されています。このたび、消防設備を設置することとなり、市の補助事業として実施されました。また、土砂流出しつつあった床下の補強工事を併せて実施され、建物の保全が図られました。
- 遺跡公園パンフレット刊行
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上記しました「しぶらの里ウォーキング」イベントに合わせ、赤穂市教育委員会では有年地区にある歴史公園パンフレット(有年原・田中遺跡公園、東有年・沖田遺跡公園)をリニューアルしました。今回のパンフレットでは、あざやかな写真を多数掲載したほか、英語併記をすることで海外の方へもご紹介できるものになっております。
内容もやや深く説明しておりますので、歴史学習テキストとしても役立てることができます。各遺跡公園で無料配布しておりますので、ぜひご入手ください。
発掘調査
- 有年原・クルミ遺跡
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昨年度より工事が始まった有年地区の区画整理事業に伴って、赤穂市教育委員会では平成18年度から本格的な発掘調査を開始しました。この年度は2,600uを全面発掘調査し、多くの成果を得ることができました(平成19年2月11日の現地説明会資料はこちら)。
現地説明会を行った後、なんと縄文時代の遺跡も地面の下に眠っていることが判明し、驚きの成果となりました。その詳細は今年度の各種分析を経て報道発表する予定ですので、ご期待ください。
出土した縄文土器この区域では、これから継続的に全面発掘調査を実施していく予定です。ご迷惑をおかけすることもあるかもしれませんが、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
- 野中遺跡
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南野中、北野中、浜市地区では、区画整理事業が予定されています。赤穂市教育委員会ではこれに先立ち、遺跡の範囲を確認するための発掘調査を実施しています。2m×5mの調査区を多数設定して機械で掘削している様子を、JRの電車の窓からご覧になった方も多いかと思います。
今年度もひきつづき調査する予定ですので、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。 - 赤穂城下町跡
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JR播州赤穂駅から赤穂城跡までの「お城通り」の発掘調査が一段落し、現在はあまり発掘調査が行われておりませんが、平成18年度は、浄念寺にて納骨堂建替えに伴う発掘調査を実施しました。
メインストリートであった「お城通り」とはまったく異なる土の様相に困惑することもありましたが、江戸時代の生活跡を発見しています。今後も、民間宅地開発に伴う発掘調査が予想されますので、ご協力よろしくお願いいたします。
木製遺物保存処理
- 赤穂城下町跡木簡
発掘調査で出土した木製品は、そのままで置いておくと変形したり収縮して壊れてしまいます。これを半永久的に保存するため、赤穂市教育委員会では薬品による保存処理を委託して行っています。
平成18年度は、赤穂城下町跡で出土した木簡(もっかん)について行いました。
標柱・看板設置
平成18年度には、文化財誘導看板2本、文化財説明看板2本、文化財標柱10本を設置しました。
文化財誘導看板は周世宮裏山古墳群に設置し、地域住民の方々のご努力に、少しでも報いることができたかと思います。文化財説明看板は、老朽化していた赤穂城跡三之丸外堀および大津八幡神社木造菩薩立像の説明看板を改修しました。標柱は市内各地に設置しております。
市内各地にある文化財標柱や説明看板を見かけたときは、説明書きを読むことでその歴史を肌で感じていただければと思います。
赤穂市文化財保護連絡員のご紹介
教育委員会では任期満了に伴い、平成19年4月1日から赤穂市文化財保護連絡員を委嘱しました。市内各地には、さまざまな文化財が数多く残されています。こうした貴重な文化財を保護し後世に継承していくため、各地区ごとに2、3名の方々に文化財保護連絡員として活躍していただいております。
文化財保護連絡員の皆さんには、地域の身近な文化財に関する情報の提供・点検活動・調査研究など、文化財の保存・活用に対して幅広い活動と協力をお願いしております。市民の皆さんとともに、文化財について気軽に相談したり協力し合って、貴重な歴史文化遺産を子孫に守り伝えていく地区のリーダーとして活躍されておりますので、ぜひ情報などをお寄せください。祖先が築いてきた大切な文化財を私たちの手で守り、次の世代へと引き継いでいきましょう。 今期の文化財保護連絡員の皆さんは次の方々です。
赤穂 青山 秀夫、大休 宗一
城西 田中 正彦、山田 明憲
塩屋 神坂 晴子、木村 繁満、赤松 光弘
西部 正木美佐恵、吉栖 清美、山本 光輝
尾崎 上杉 太郎、目木 敏明
御崎 山脇 拓士、野山喜久子
坂越 篠原 明 、尾上 松男、倉橋 貞夫
高雄 浦池 伸朔、大黒 正昭、薮内早智子
有年 中山 茂雄、池本 芳文、竹平 慎一、立花 良和
(任期 平成21年3月31日)
平成19年度の展望
今年度の最も大きな新規事業として、坂越船祭りの総合調査があります。坂越船祭りは「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」として国に選択されおり、本年度から3ヵ年かけて本格的な調査が行われます。「瀬戸内三大船祭」として名高いこの祭りについて、歴史、民俗、芸能など各分野からの学際的な調査が行われることにより、その特徴が明らかになってくるものと思われます。今後の調査にご期待ください。