『蟻無山古墳群・塚山古墳群・周世宮裏山古墳群測量調査報告書』刊行のご紹介
このたび、赤穂市教育委員会では『蟻無山古墳群・塚山古墳群・周世宮裏山古墳群測量調査報告書』を刊行いたしました。
蟻無山古墳群は、古墳時代中期(5世紀前半)に築かれた、3基からなる古墳群です。このうち蟻無山1号墳は、これまでの調査により古墳時代中期における千種川流域最大の古墳として注目されており、昭和50年3月18日に兵庫県指定史跡となっています。
昭和40年代に簡易な測量調査が実施され、その概要はわかっていましたが、樹木が大量に繁茂し、蟻無山1号墳の形状が把握できない状態であり、蟻無山古墳群2、3号墳に至っては所在不明となっていました。しかし、平成13年度に農林水産課実施の森林空間総合整備事業によって間伐が実施され、古墳の一部の見通しが良くなった結果、従来考えられていた蟻無山1号墳の形状が実際は異なること、そして3号墳が現在敷設されている登山道周囲にありそうなことがわかってきました。
そこで赤穂市教育委員会では、遺跡内容の範囲確認のため、文化庁、兵庫県から補助金を受けて、蟻無山古墳群の測量調査を実施しました。
調査の結果、蟻無山1号墳は、全長52mとこれまでの見解とは変わらないものの、「段築(だんちく)」及び「造り出し」をもつ、「帆立貝形古墳」であることが判明しました。また、蟻無山2、3号墳も確認され、その位置と現状を把握することができました。
さらに、有年考古館に収蔵されていた蟻無山古墳群採集遺物(赤穂市指定有形文化財)について再整理した結果、これまで知られていた円筒埴輪、朝顔形埴輪、家形埴輪、馬形埴輪、盾形埴輪、蓋(きぬがさ)形埴輪に加え、船形埴輪、鳥形埴輪、靫(ゆぎ)形埴輪の存在が明らかとなりました。これらは古墳時代中期(5世紀)において、蟻無山1号墳の被葬者が千種川流域で大きな権力を誇っていた証拠となるもので、今後は貴重な研究資料となり、播磨の歴史を物語ってくれることでしょう。
塚山古墳群は、赤穂市有年牟礼に所在する古墳時代後期(6世紀後半〜7世紀中葉)の群集墳(多くの墓が集合したもの)で、横穴式石室を埋葬施設としています。
これまで『赤穂市史』第四巻の記述が最新の情報でしたが、測量調査に伴って周辺にも間伐を広げた結果、古墳の数がこれまで知られていた20基から、推定51基を数えるまでになり、市内最大の群集墳であることがわかりました。
また、兵庫県指定史跡である塚山6号墳(平成2年3月20日指定)と同様の石室構造(玄室間仕切り)をもつ古墳がほかにも2基確認されたほか、方形壇をもつ終末期古墳(7世紀中葉と推定)が発見されるなど、多くの成果が得られました。
周世宮裏山古墳群は、赤穂市周世に所在する古墳時代後期(6世紀後半〜7世紀中葉)の群集墳で、横穴式石室を埋葬施設としています。
間伐前は、昭和59年に刊行された『赤穂市史』第四巻に記された古墳のドット図が最新の情報であり、古墳の規模、形状等はまったく不明でした。
しかし今回の測量調査により、小型の横穴式石室墳が周溝を共有しつつ、水平方向に連続して築造されていることが判明しました。
刊行した報告書はA4判112ページで、はじめの8ページは、それぞれの遺跡や採集遺物を精細なカラー写真で紹介しています。
これまで、千種川流域最大の中期古墳である蟻無山1号墳や、塚山古墳群中の兵庫県指定史跡である塚山6号墳が、これらの遺跡のなかで著名なものとして扱われてきましたが、全体的な評価は行われたことがありませんでした。
本書は、赤穂の歴史を語るうえで欠かせないこれらの遺跡についての基礎資料となりました。
販売価格は700円とお求め易くなっております。販売は限定で200部ですので、是非お買い求めください。送料が別途必要ですので、郵送にて購入をご希望の方はご連絡ください。左欄の上側に連絡先が記載されております。